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ここからは実践編です。改正基本計画は、企業のBCP(事業継続計画)について具体的な数値目標と、内容面の要求水準を示しました。今回は、計画の記述に沿って「国が企業に何を求めているのか」を整理し、実務の手順に落とし込みます。
国が掲げたBCPの数値目標
- 大企業のBCP策定完了率:75.8%【令和7年】→ 100%【令和17年】
- 中堅企業のBCP策定完了率:54.8%【令和7年】→ 80%【令和17年】
- 物流事業者(大企業):41%【令和5年】→ 100%【令和12年】
- 物流事業者(中堅企業):17%【令和5年】→ 100%【令和17年】
物流事業者に個別の目標が設定された点は注目です。発災時の物資輸送の要であるにもかかわらず策定率が低いためで、物流業界には今後、策定支援と要請の両面で働きかけが強まると考えられます。
計画が求めるBCPの中身――形だけの計画は通用しない
計画は、実効性のあるBCPの策定にあたって企業が検討・反映すべき事項を具体的に挙げています。
- ライフライン・インフラの被災・復旧状況を織り込むこと(停電約1,600万軒、断水約1,400万人、携帯基地局の51%停波という想定が前提です)
- 発災後の車両使用抑制への協力を前提とすること
- 従業員の通勤困難を想定し、通勤可能な人員を見込んだ優先業務の絞り込みを行うこと
- テレワークによる事業継続を検討すること
- 東京圏は広域から鉄道通勤者が多く、鉄道施設の損傷により長期間の不通が継続するおそれを考慮すること
さらに、自社単独の備えにとどまらない視点も求められています。
- サプライチェーンや企業間取引でつながる全国の企業も、東京圏の企業活動の数日間停止や物流の停滞を想定し、同じサプライチェーンに属する企業間で足並みを揃えてBCPを策定すること
- 同業他社と災害時に相互支援することをあらかじめ合意しておくなど、他企業との連携を念頭に置くこと
- 幹部を含めた図上訓練等を実施し、BCM(事業継続マネジメント)を通じてBCPを継続的に見直すこと
「作成済み」で満足せず、幹部が参加する訓練で回し、毎年見直す。これが計画の求める水準です。
一斉帰宅抑制――従業員を「とどめる」準備はあるか
帰宅困難者約840万人が一斉に徒歩帰宅を始めれば、道路が混雑して緊急車両の通行を妨げ、群集事故のおそれもあります。そこで計画は、企業・学校等に対して次の取組を促しています。
- 発災時に従業員等を一定期間とどめることの必要性の周知
- そのために必要な食料・飲料水・災害用トイレ等の備蓄の推進
- 災害用伝言板サービスやSNS等、複数の安否確認手段の使用と発災時対応の周知
従業員を社内にとどめる以上、その間の水・食料・トイレは会社が用意しておく必要があります。従業員数分の3日分程度の備蓄は、もはや福利厚生ではなく、経営者の基本的な備えと考えるべきです。
実務の進め方――5つのステップ
- ステップ1:現状把握。自社のBCP・防災体制の有無と、最終見直し日を確認する
- ステップ2:前提条件の更新。新しい被害想定(停電・断水・通信・交通)を自社の立地・業種に当てはめる
- ステップ3:優先業務の絞り込み。出社できる人員が限られる前提で「止めない業務」を決める
- ステップ4:文書化と社内周知。安否確認ルール、帰宅抑制方針、備蓄リストを明文化する
- ステップ5:訓練と見直し。年1回は幹部参加の訓練を行い、結果を計画に反映する
中小企業にとって、いきなり本格的なBCPはハードルが高いのも事実です。そこで次回は、中小企業・個人事業主向けの入り口として国が用意している「事業継続力強化計画」の認定制度を解説します。
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本記事は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(令和8年6月12日閣議決定)に基づいて執筆しています。