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令和8年7月14日施行の小型無人機等飛行禁止法の改正で、個人・企業に最も大きな影響を与えるのが「飛行禁止エリアの拡大」です。第2回では、どこがどれだけ広がるのか、そして飛行できる例外は何かを解説します。
「おおむね300m」から「おおむね1000m」へ
現行法では、対象施設の敷地又は区域と、その周囲おおむね300メートルの地域(対象施設周辺地域)の上空で、小型無人機等の飛行が禁止されています(法第10条第1項)。
改正法は、法第3条から第8条までに定められた各対象施設(国の重要施設等、外国公館等、防衛関係施設、原子力事業所など)の規定にある「300メートル」をすべて「1000メートル」に改めました。令和8年7月14日以降、飛行禁止エリアは「敷地又は区域+周囲おおむね1000メートル」の上空となります。
どれくらい広がるのか
半径ベースでは約3.3倍ですが、面積で考えるとインパクトはさらに大きくなります。仮に施設を一つの点とみなして単純な円で比較すると、半径300mの円の面積は約28ヘクタール、半径1000mの円は約314ヘクタール。実に約11倍です。
実際には施設の敷地の縁からおおむね1000mが基準となるため、禁止エリアはこれよりさらに広くなります。「施設からかなり離れているから大丈夫」という従来の感覚は、7月14日以降は通用しないと考えてください。
1000mという距離は、大人の足でも10分以上歩く距離です。市街地に所在する駐屯地や基地の場合、その周囲1000mには住宅地、商業地、公園、河川敷などが広く含まれることになります。これまで施設からある程度離れた場所で空撮や練習をしていた方も、施行後はそのエリアが飛行禁止に含まれていないか、必ず確認が必要です。
また、周辺地域に海域が含まれるケースもあります。この場合、後述の事前通報の相手方に海上保安本部等が加わるなど、手続にも影響します(詳細は第4回・第5回)。港湾や沿岸部で業務飛行を行う企業は特に注意してください。
対象防衛関係施設とは
本連載が中心に扱う防衛関係施設については、法第6条に基づき防衛大臣が「対象防衛関係施設」を指定します。指定されているのは自衛隊の施設と在日米軍の施設・区域で、その一覧と各施設の告示図面・告示本文は防衛省ホームページで公開されています。
重要なのは、令和8年7月14日付の新しい告示図面・告示本文が既に公開されていることです。ご自身の飛行予定地が拡大後のエリアに含まれるかどうかは、この新図面で確認できます。
例外的に飛行できるのはどんな場合?
禁止エリアでも、次の場合には飛行が可能です(いずれも事前の手続が必要です)。
| 場所 | 飛行できる者 |
| 対象防衛関係施設の敷地又は区域の上空 | 対象防衛関係施設の管理者の同意を得た者 |
| 敷地又は区域の周囲おおむね1000m(施行前は300m)の地域の上空 | ①管理者の同意を得た者 ②土地の所有者若しくは占有者(正当な権原を有する者に限る)又はその同意を得た者 ③国又は地方公共団体の業務を実施するために飛行させる者 |
例えば、自宅や自社の土地が周辺地域内にあれば、土地の所有者としてその上空で飛行させることは可能です。ただしその場合でも、飛行の48時間前までの通報などの手続は必要です。手続の詳細は第4回(自衛隊施設)・第5回(在日米軍施設)で解説します。
逆にいえば、周辺地域内であっても「他人の土地の上空」を、管理者の同意も土地所有者等の同意も得ずに飛行させることはできません。エリアが1000mに広がったことで、一つの飛行経路が複数の土地にまたがるケースも増えます。経路上の土地の権利関係の確認は、これまで以上に丁寧に行う必要があります。
企業の業務飛行はここに注意
測量、外壁・屋根やインフラの点検、不動産・広告用の空撮、農薬散布など、業務でドローンを飛ばす企業にとって、300mから1000mへの拡大は「手続が必要な案件の急増」を意味します。これまで規制と無縁だった現場が、7月14日を境に禁止エリア内になることも珍しくありません。
受注段階で飛行地点の座標と告示図面を突き合わせ、手続の要否と所要日数(自衛隊施設は同意申請が10営業日前まで、在日米軍施設は30日前まで)を織り込んだスケジュールを組むことが、納期トラブルや違反を防ぐ鍵になります。
よくある疑問
Q1.施設の真上を避けて、周辺の公園や空き地の上空だけ飛ばすのはOK?
NGです。禁止されているのは「対象施設周辺地域の上空」全体であり、施設の真上に限られません。周囲おおむね1000mの地域の上空すべてが規制の対象です。
Q2.高い高度で飛ばせば規制の対象外になる?
法律は対象施設周辺地域の「上空」での飛行を禁止しており、条文上、高度による限定は置かれていません。「高く飛ばせば適法になる」という規定はないため、エリア内である以上は手続が必要と考えるべきです。
Q3.施行日(7月14日)をまたぐ案件はどう扱えばいい?
7月14日以降の飛行には改正後のルールが適用されます。拡大により新たに禁止エリアとなった部分で施行直後に飛行する場合には、申請期限の経過的な特例が設けられています(自衛隊施設は第4回、在日米軍施設は第5回で解説します)。
実務チェックポイント
- 飛行予定地点の周囲1km以内に、自衛隊・在日米軍の施設がないかを防衛省ホームページの施設一覧・告示図面(令和8年7月14日付)で確認する。
- 禁止エリアにかかる場合、自分がどの立場(管理者の同意が必要か、土地所有者等として同意不要か)に当たるかを整理する。
- 航空法上の飛行禁止空域・特定飛行の規制(国土交通大臣の許可・承認、DIPSでの飛行計画通報)も別途確認する。
まとめと次回予告
- 令和8年7月14日から、飛行禁止エリアは「敷地+周囲おおむね1000m」に拡大(単純比較で面積約11倍)
- 拡大後のエリアは、防衛省HPの令和8年7月14日付告示図面で確認できる
- 土地所有者等の例外はあるが、通報などの事前手続は必要
次回・第3回は、もう一つの大きな改正点である「罰則の強化(直接罰の新設)」を解説します。
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出典・根拠資料
- 重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第47号)本文
- 防衛省関係重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律施行規則(令和元年防衛省令第3号)
- 防衛省ホームページ「小型無人機等飛行禁止法関係」(令和8年7月3日更新)https://www.mod.go.jp/j/presiding/law/drone/index.html
本記事は上記の公表資料に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際に飛行を計画される際は、必ず最新の告示・防衛省等の公式情報をご確認ください。