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変更点解説の最終回は、「膨大な人的・物的被害への対応強化」と、今回新しく項立てされた「迅速な復興・より良い復興への備え」です。発災後に何が起き、国と自治体が何を優先するのかを知ることは、企業が発災後のシナリオを描くうえで欠かせません。
対応強化の3本柱
膨大な人的・物的被害への対応は、次の3つの柱で推進されます。
- 予防による被害軽減:直接被害の絶対量そのものを減らす
- 災害対応力の強化:限られた人的・物的リソースの中で対応する
- 災害対応ニーズの大幅な抑制と役割の分担:真に支援が必要な被災者にリソースを集中する
予防による被害軽減――耐震化と火災対策
住宅の耐震化率は92%(令和5年)から令和17年までに「耐震性が不十分なものをおおむね解消」する目標が掲げられました。1981年の耐震基準導入前の建築物のうち、病院・店舗・旅館等の不特定多数が利用する大規模建築物や緊急輸送道路沿いの建築物の耐震化に重点的に取り組み、2000年以前に建築された木造住宅の耐震性能検証も普及させます。国と地方公共団体は、耐震診断・耐震改修・建替えについて、補助制度、税制等の支援策の活用を促進すると明記されています。
火災対策では、死者の約7割が火災によることを踏まえ、感震ブレーカーの設置率を20%(令和6年)から「おおむね設置」(令和17年)へ、著しく危険な密集市街地の解消率を84%から100%(令和12年)へという目標が設定されました。店舗・事業所を構える経営者にとって、建物の耐震性と出火防止は「自社の資産防衛」と「地域への責任」の両面を持ちます。
災害対応力の強化――「場所」から「人」への支援へ
今回の変更では、「場所(避難所)の支援」から「人(避難者等)への支援」へ考え方を転換する必要があることが明記され、国際的な人道支援の基準である「スフィア基準」を考慮した避難所等の生活環境向上が盛り込まれました。トイレ・ベッド等の災害用物資・資機材の備蓄を行う市区町村の割合100%という目標も設定されています。
また、地方公共団体の受援計画の策定率100%(令和15年)、DMAT等の医療体制の維持、緊急消防援助隊やTEC-FORCEの強化など、応援・受援の体制整備が並びます。防災用品・衛生用品・簡易ベッド等を扱う事業者には、需要拡大が見込まれる分野です。
ニーズの抑制と役割の分担――在宅避難・広域的避難・帰宅困難者対策
避難者約480万人に対し避難所は不足します。そこで計画は「在宅避難」の促進を打ち出しました。飲料水3日分以上を備蓄する家庭の割合100%、マンションの防災訓練実施率100%、エレベーターの地震時管制運転装置の設置率70%などの目標が並びます。あわせて、ホテル・旅館等を避難所として活用する際のマニュアルを作成している都県の割合100%という「広域的避難」の目標も新設されました。宿泊業の方は、自治体との協定という形で防災に関わる機会が増えていくと予想されます。
帰宅困難者約840万人への対応では、「むやみに移動を開始しない」原則の徹底、一斉帰宅の抑制、一時滞在施設の確保が柱です。企業には従業員を一定期間とどめるための備蓄等が求められますが、これは第7回で詳しく扱います。
新設された「迅速な復興・より良い復興への備え」
今回の改正で新しく項立てされたのが復興への事前の備えです。主な内容は次のとおりです。
- 災害廃棄物処理計画の策定率100%(緊急対策区域の市町村、令和12年)
- 事前復興まちづくり計画の策定促進、「復旧・復興ハンドブック」の活用周知
- 地籍調査の加速化(優先実施地域の完了率66%→72%、令和11年)
- 生業の再建:商工会・商工会議所等との連携体制をあらかじめ構築し、中小企業等の被害状況を迅速に把握できる体制を整備。被災した中小企業者等の事業復旧促進のため、公的金融機関の融資等の支援を行えるようにしておく
「生業の再建」が計画に明記されたことは、中小企業・個人事業主にとって重要です。発災後の資金繰り支援の枠組みが事前に用意される方向性が示されたわけですが、支援の窓口となる商工会等との関係を平時から築いておくことが、いざというときの再建スピードを左右します。
次回からは実践編です。企業が今すぐ動くべきBCPの策定・見直しを解説します。
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本記事は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(令和8年6月12日閣議決定)および同変更の説明資料に基づいて執筆しています。