事務所HPはこちら⇒「アラモード行政書士事務所」
質問
日本版DBS制度の課題は何ですか?事業者、従業者、保護者それぞれの立場から教えてください。
回答
日本版DBS制度の課題は、ひとことで言うと、
「こどもの安全を守るために必要な制度である一方、現場で運用するには負担と限界があること」です。
立場ごとに整理すると、主に次のようになります。
- 事業者
体制整備、情報管理、対象者判断、労務対応の負担が大きいこと - 従業者
個人情報の取扱いへの不安、就業制限や配置変更への懸念があること - 保護者
制度への期待が大きい一方で、制度だけで全ての被害を防げるわけではないこと
つまり、日本版DBSは非常に重要な制度ですが、
「確認制度」だけで完結するものではなく、組織としてどう運用するかが課題になる制度です。
解説
1.事業者から見た課題
事業者にとって一番大きい課題は、制度を実際に回すための負担です。
日本版DBSでは、犯罪事実確認だけでなく、
- 早期把握
- 相談
- 調査
- 保護・支援
- 研修
- 防止措置
- 情報管理措置
まで含めた体制整備が求められます。
そのため事業者は、
- 誰が対象従事者かを整理する
- 同意取得の流れを作る
- 台帳や規程を整備する
- 情報漏えいを防ぐ
- 必要に応じて配置変更も検討する
といった多くの対応をしなければなりません。
特に小規模事業者にとっては、人手も限られる中で新しい管理体制を作ること自体が大きな課題です。
制度は必要でも、現場で回らなければ意味がない。ここが事業者側の難しさです。
2.従業者から見た課題
従業者の立場から見ると、まず大きいのは個人情報への不安です。
犯罪事実確認では、本人特定情報の提出や、同意手続への対応が必要になります。
加えて、情報管理措置では、適正管理、目的外利用の禁止、第三者提供の禁止、漏えい時の対応まで厳しく求められています。
そのため、従業者の側では、
- 自分の情報がどう扱われるのか
- 誰が見られるのか
- 退職後はどうなるのか
といった不安が生じやすいです。
また、防止措置の場面では、確認結果やおそれの判断によって、業務制限や配置変更が生じる可能性もあります。
事業者にとってはこどもの安全確保ですが、従業者にとっては、働き方や評価に影響する問題に見えやすい。
ここを丁寧に説明しないと、制度が「安全のための制度」ではなく、自分たちを疑う制度のように受け取られる課題があります。
3.保護者から見た課題
保護者の立場から見ると、日本版DBSには大きな安心材料というメリットがあります。
一方で課題は、制度に過剰な期待をしてしまいやすいことです。
日本版DBSで確認できるのは、特定性犯罪事実該当者に当たるかどうかです。
つまり、検挙されていない、起訴されていない、有罪判決等に至っていない事案までは、通常この確認だけでは把握できません。
このため、制度が導入されているからといって、それだけで絶対安全になるわけではないという限界があります。
保護者としては、「DBS対応済み」という言葉に安心しやすい一方で、実際には
- 日頃の見守り
- 相談しやすい環境
- 研修や内部ルール
- 早期把握と調査の仕組み
まで整って初めて意味があります。
つまり、保護者にとっての課題は、制度の有無だけでなく、その運用実態まで見なければならないことです。
4.制度全体としての課題
制度全体で見ると、日本版DBSの課題は、
「前歴確認に目が向きやすいが、本当は体制整備こそが中心である」
という点です。
ガイドラインでも、制度は犯罪事実確認だけでなく、安全確保措置や情報管理措置を一体で求めています。
つまり、この制度は「過去を確認する制度」であると同時に、これから問題を起こさせない組織づくりの制度でもあります。
例えるなら、防犯カメラを付けるだけでは家は守れず、
- 鍵をかける
- 家族でルールを決める
- 危険を見つけたらすぐ対応する
まで必要なのと同じです。
日本版DBSも、確認制度だけで完璧になるわけではなく、運用と体制の質が問われることが最大の課題です。
5.まとめ
要するに、日本版DBS制度の課題は、
- 事業者にとっては、体制整備と情報管理、労務対応の負担
- 従業者にとっては、個人情報や就業上の不安
- 保護者にとっては、制度への期待と現実の限界のギャップ
にあります。
それでも、この制度は、こどもへの性暴力を防止するために重要な一歩です。
大切なのは、「確認制度」としてだけでなく、「組織としてこどもを守る仕組み」として理解することです。
事務所HPはこちら⇒「アラモード行政書士事務所」