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防衛事業適合事業者契約を結んだ後、実際に秘密を取り扱う個別の調達契約(秘密取扱原因契約)には、「防衛事業適合事業者の秘密の保護に関する特約条項」が付されます(訓令第13条第5項)。今回はこの特約と、経営インパクトが最も大きい違約金条項、そして特定秘密に関わる適性評価(セキュリティ・クリアランス)の特約を解説します。

秘密保護特約のポイント──シンプルだが責任は重い

特約条項本体は5か条とシンプルです。個別契約で取り扱う秘密の保護は防衛事業適合事業者契約の定めに従う、という構造になっているためです。ただし次の点は要注意です。

  • 従業者や下請負事業者の従業者、立入りを認めた者の故意・過失による漏えいでも、会社は責任を免れない(第1条第2項)
  • 秘密の取扱いに係る業務の下請負は原則禁止。やむを得ず行う場合は、相手方・契約内容・保護手段等を書面で示して甲の許可が必要(第4条)
  • 下請負先も防衛事業適合事業者契約等を締結した「秘密取扱事業者」でなければならず、元請には下請の保全状況の確認義務がある
  • 特約違反の場合、催告なしで契約の全部又は一部を解除されることがある(第5条)

違約金条項──漏えいの値段

特約の付紙「秘密の保全又は保護の確保に関する違約金条項」は、漏えい時の違約金を具体的な率で定めています。契約解除の有無にかかわらず請求され得るもので、経営リスクとして正確に把握しておくべき数字です。

 事由 違約金の基準
 装備品等秘密の漏えい 契約金額の5/100
特定秘密の漏えい契約金額の7.5/100
 特別防衛秘密の漏えい 契約金額の10/100
故意又は重大な過失による漏えい上記と同額を加算(実質2倍)
 漏えいの事実を直ちに報告しなかった 基準額の50/100を加算
漏えいに関し虚偽の報告をした基準額の50/100を加算
 過去10年以内にも漏えいで違約金請求歴あり 同区分の基準額と同額を加算
極めて軽微な過失(報告遅滞・虚偽なし)契約金額の5/100以内で甲が定める額

違約金の計算イメージ

数字の感覚をつかむために試算してみます。

事例
契約金額10億円の案件で特定秘密が漏えいし、重大な過失があり、かつ報告が遅れたケースを想定。

基準額7,500万円(7.5%)に、重過失加算で同額の7,500万円、報告遅滞加算で基準額の50%にあたる3,750万円が上乗せされ、合計1億8,750万円に達します。

しかも違約金とは別に損害賠償の請求もあり得ます(違約金条項第4条)。

一つの行為で複数の秘密を漏えいした場合は各秘密について算出した額の最高額が採用され、責任期間は秘密の指定期間の終了までで、期間経過後3年を経過するまで請求が可能です(同第2条)。契約が終了・解除された後も違約金条項の効力は存続します。「直ちに報告しなかった」だけで5割増しになる設計は、事故時の初動報告体制がいかに重要かを物語っています。

下請・三者間契約の位置づけ

違約金の請求要領には、下請負に関する詳細な定めがあります。下請負事業者の故意・過失による漏えいでは、元請と下請の間の下請負契約の額を基礎として算定した違約金を、契約当事者である元請が支払います。元請から下請への求償は認められますが、漏えいの態様、過失の程度、経営への影響等を総合的に勘案した合理的な範囲での負担割合を、双方誠実に協議して定めることとされ、下請代金支払遅延等防止の関係法規の遵守も明記されています。なお、甲・乙・下請負事業者の三者間で締結された既存の特約条項に基づく三者間契約の違約金条項が適用される場合は、そちらが優先します。下請を使う事業者は、下請契約書の損害分担条項をこの枠組みと整合させておくべきです。

適性評価特約──特定秘密は「人」の審査が入る

特定秘密を従業者に取り扱わせるには、防衛装備庁長官による適性評価(セキュリティ・クリアランス)が必要です。契約には「適性評価に関する特約条項」が付され、会社側には次の義務が生じます。

  • 候補者名簿の作成・提出と変更時の通知。適性ありと認められた従業者を関係社員名簿に登載(第1条)
  • 照会への報告、対象者・上司への面接等の便宜供与など、評価実施への協力(第2条)
  • 評価結果文書の厳格管理。適性ありの通知文書は送付日から5年、その他は1年を超えて保存しない(第3条)
  • 評価結果等の個人情報の目的外利用・第三者提供の禁止(第4条)
  • 適性なしの通知があった従業者には直ちに特定秘密を取り扱わせない措置(第5条)
  • 外国との関係の変化、検挙、懲戒対象行為、薬物、経済問題等の事情が生じていないかの年1回以上の確認と報告(第6条)
  • 派遣労働者を従事させる場合の雇用主への通知等の措置(第7条)

採用・人事・労務管理に直結する内容であり、就業規則や個人情報管理規程との整合も必要です。人事部門を早い段階で巻き込んでおきましょう。適性評価に関する文書は5年・1年という保存期限管理まで求められるため、文書管理台帳への組込みも忘れずに。次回は、契約締結後に続く自己点検と検査の実務です。

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【出典】防衛事業適合事業者制度等に関する訓令(令和7年防衛装備庁訓令第19号)、同訓令の実施要領(装装保第14846号)、防衛事業適合事業者契約条項、防衛事業適合事業者の秘密の保護に関する特約条項、適性評価に関する特約条項、防衛事業適合事業者制度等に係る地方防衛局による検査等の実施要領、認証申請・防衛事業適合事業者契約の申込みに係る提出資料について(2026年3月・装備政策部装備保全管理課)ほか防衛装備庁公表資料。本記事は執筆時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の申請に当たっては最新の公示・様式をご確認ください。