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令和8年6月12日、「首都直下地震緊急対策推進基本計画」の変更が閣議決定されました。平成27年3月の前回変更から約10年ぶりとなる大きな見直しです。ニュースでは被害想定の数字ばかりが取り上げられがちですが、この計画は国の防災施策の「設計図」であり、今後10年間の政策・予算・支援制度の方向性を示すものです。

つまり、経営者にとっては「国がどこにお金と力を注ぐのか」を読み解く一級の資料でもあります。

本シリーズでは全10回にわたり、行政書士の視点から、計画の概要、変更点、そして個人事業主・企業が取るべき行動、補助金との関係性の予測までを解説していきます。第1回は全体像の整理です。

首都直下地震緊急対策推進基本計画とは何か

この基本計画は、首都直下地震対策特別措置法に基づいて政府が作成する計画で、首都直下地震に関して地震防災上緊急に講ずべき対策の推進に関する方針や施策を定めるものです。現行計画は平成26年3月に閣議決定され、平成27年3月に変更されて以来、約10年間運用されてきました。

対象となる「首都直下地震緊急対策区域」は、1都9県309市区町村(平成26年3月指定)に及びます。東京都だけの話ではなく、神奈川・千葉・埼玉をはじめとする広域の事業者に直接関係する計画です。さらに、千代田区・中央区・港区・新宿区は「首都中枢機能維持基盤整備等地区」に指定されており、政治・行政・経済の中枢機能を守るための特別な位置づけがなされています。

この基本計画の下には、政府業務継続計画(行政中枢機能の維持に係る緊急対策実施計画)や具体的な応急対策活動に関する計画が置かれ、さらに都県知事が作成する地方緊急対策実施計画など、地方公共団体の各種計画へと連なっていきます。国から地方、そして企業・個人へと対策が展開される体系の頂点にあるのが、この基本計画です。

なぜ今、改正されたのか

改正の直接のきっかけは、前回計画の策定から約10年が経過したことです。令和5年12月、中央防災会議防災対策実行会議の下に「首都直下地震対策検討ワーキンググループ」が設置され、防災対策の進捗状況を踏まえた被害想定の見直しと新たな防災対策の検討が行われました。その報告書が令和7年12月19日に公表され、これを踏まえて今回の計画変更に至っています。

計画が対象とするのは、切迫性の高いM7クラスの地震です。計画では「M7クラスの地震はいつどこで発生してもおかしくなく、地震の発生が切迫していると考えて防災対策を行う必要がある」と明記されています。被害想定の対象としては、発生可能性や首都中枢機能への影響を考慮し、被害が甚大となる「都心南部直下地震(M7.3)」が選定されました。

今回の変更点を先取りすると

詳細は次回以降で解説しますが、主な変更点は次のとおりです。

  • 新たな被害想定への更新(死者約1.8万人、全壊・焼失約40万棟、経済的被害約83兆円など)
  • 今後10年の減災目標の再設定(死者数・全壊焼失棟数の「半減以上」、災害関連死・経済的被害の最大限の低減)
  • 施策の進捗を測る具体目標(指標)を47個から189個へ大幅拡充
  • 「行政が守る者、国民が守られる者」から「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」への考え方の転換
  • 「迅速な復興・より良い復興への備え」の項目新設

経営者にとってなぜ重要なのか

注目すべきは、企業が計画の中で「対策の受け手」ではなく「担い手」として明確に位置づけられたことです。企業のBCP(事業継続計画)策定率事業継続力強化計画の認定件数が、国の具体目標として数値で掲げられました。国が数値目標を掲げるということは、その達成に向けて予算措置や支援制度、優遇措置が動くということです。

ここに補助金・支援策との接点が生まれます。

次回は、今回の改正の前提となった「新たな被害想定」を、経営者の視点でどう読むべきかを解説します。

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本記事は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(令和8年6月12日閣議決定)および関連公表資料に基づいて執筆しています。制度の詳細は必ず最新の公的情報をご確認ください