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変更点解説の3回目は「首都中枢機能の確保」です。政治・行政の話と思われがちですが、計画は「経済中枢機能」すなわち企業の本社系機能を首都中枢機能の一角と明確に位置づけています。東京圏に本社や主要拠点を置く企業はもちろん、東京圏と取引するすべての事業者に関わる内容です。

首都中枢機能とは――政治・行政・経済

計画のいう首都中枢機能は、政治中枢・行政中枢・経済中枢の3つです。発災直後においても途絶することなく継続性の確保が求められる機能であり、今回の変更では、首都中枢機関が実施すべき非常時優先業務の継続に係る目標や、ライフライン・インフラの復旧等に係る「機能目標」が充実されました。

ワーキンググループの検討では、中央省庁について、庁舎が大きく損壊するおそれは小さいものの、業務再開に一定の制約が発生する可能性、ライフラインが想定どおり復旧できないおそれ、交通施設の被災による参集職員の不足、過酷事象等により現行のBCPでは対応が困難な可能性などが指摘されました。経済中枢機能についても、電力・通信やデータセンター等の被災により機能が停滞・低下し、本社系機能の停滞・低下が全国的な企業活動に影響するとされています。

変更のポイント――BCPは「作る」から「機能させる」へ

今回の変更のポイントは次の4点です。

  • 首都中枢機関にはBCPの作成のみならず「BCPの実効性向上」が求められることを明記
  • 政府による情報発信の強化(デマ・流言への対策を含む)を明記
  • 東京圏において首都中枢機能の維持が困難となる最悪の事態も想定した「一時的な代替拠点」の検討を明記
  • ライフライン・インフラの耐震化・早期復旧だけでなく「冗長性・代替性の確保」への取組を明記

「BCPを作成済みか」ではなく「BCPが実際に機能するか」へ、「早く復旧させる」だけでなく「止まっても代替が効くか」へ。この発想の転換は、政府機関だけでなく企業のリスク管理にもそのまま当てはまります。

企業の本社系機能の確保――計画が企業に求めること

計画は企業の本社系機能について、BCPの作成とBCM(事業継続マネジメント)を通じたBCPの見直し等を継続的に実施すること、そして東京圏において中枢機能の維持が困難となる場合も想定して、企業等のBCPにおける代替拠点の検討を促進することを明記しました。政府自身が代替拠点を検討する時代に、企業だけが「東京の本社は無事」という前提でいるわけにはいきません。

金融面では、金融決済機能の継続性の確保が掲げられ、銀行業界における横断的訓練を毎年度100%実施する目標が設定されています。決済システムは非常用発電やバックアップにより継続稼働が可能とされる一方、国内外で金融市場等への風評が流れ、不安心理が増幅するおそれも指摘されており、政府の情報発信強化とセットの対策となっています。

テレワーク・二地域居住・フェーズフリー

今回の計画で目を引くのが、「新たなライフスタイル定着による被害軽減」という項目です。テレワークや二地域居住を平時から定着させることで、発災時の避難先での円滑な勤務や広域的避難につなげ、負傷者・要救助者・帰宅困難者となる可能性のある人の数をあらかじめ減らすという考え方です。特定居住促進計画の策定数を5件(令和6年)から600件(令和11年)に増やす目標も掲げられました。

また、日常時と非常時という社会のフェーズを分けない「フェーズフリー」の考え方に基づき、災害の際にも役立つ仕組みを普段の生活・経済の中にデザインしていくことも明記されました。テレワーク体制の整備は、人材確保や生産性の文脈で語られがちですが、今回の計画により防災施策としての位置づけも得たことになります。企業がテレワーク環境や地方拠点に投資する際、防災の観点からの支援策と接続する可能性が出てきたと見ています。

次回は、膨大な人的・物的被害への対応強化と、新設された「復興への備え」を解説します。

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本記事は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(令和8年6月12日閣議決定)および同変更の説明資料、首都直下地震対策検討ワーキンググループ報告書概要に基づいて執筆しています。