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「うちは地元の市役所の入札参加資格を取ってるから大丈夫」――前回の記事にそんな感想をいただきました。ですが、残念ながらその資格では、目の前にある自衛隊駐屯地にも、近くの税関にも納入できません。国の機関に物を納めるには、まったく別の資格が必要なのです。それが「全省庁統一資格」。今回は、地方自治体の入札参加資格との違いを、一度で整理します。これを読み終える頃には、自分の事業がどちらの資格を取るべきか、判断の軸ができているはずです。

1.そもそも『全省庁統一資格』とは何か

名前は聞いたことがあっても、内容まできちんと説明できる事業者は意外と少数派です。取引先の経営者と話していても、「あの統一なんとかってやつ?」程度の認識でとどまっていることがよくあります。まずは資格の基本から押さえましょう。

呼び名と根拠法令

一般競争(指名競争)参加者の入札参加資格などの表現がなされ国、市区町村の入札参加資格と区別が困難なところ、「調達ポータル」にて「全省庁統一資格」と明記され現在に至ります。根拠となるのは、国の会計制度を定める「会計法」と、その施行令である「予算決算及び会計令(予決令)」です。国の機関が物品調達や役務契約を行うときに、契約相手として参加できる事業者をあらかじめ国が審査・登録しておく仕組み――簡単に言えば「国の入札に参加するためのパスポート」のようなものです。審査では、年間平均生産(販売)高、自己資本額、流動比率、営業年数といった経営指標がチェックされ、その結果に応じてA・B・C・Dの4等級に振り分けられます。等級については別の回で詳しく扱いますが、ここでは「ただ申請すれば終わり、ではない。きちんと事業実績が見られる」という点だけ押さえてください。

全省庁で共通して使える資格、という意味

かつては各省庁ごとに別々の資格制度がありましたが、平成13年の中央省庁再編にあわせて一本化されました。いまは一つの資格で、内閣府・財務省・経済産業省・国土交通省・厚生労働省・防衛省など、ほぼすべての中央省庁とその出先機関の調達に参加できる、いわば「全省庁共通の鍵」になっています。言い換えると、3年に一度の更新さえきちんと行えば、全国の国の機関に対してずっと営業の入口を持ち続けられる、ということです。地方の事業者にとっては、これは想像以上に大きな話です。

2.地方自治体の入札参加資格と何が違うのか

ここで多くの事業者が混乱するのが、「地方自治体の入札参加資格」との違いです。両者は名前こそ似ていますが、対象も窓口も、まったくの別物だと押さえてください。

対象となる発注機関の違い

地方自治体の入札参加資格は、その自治体――例えば〇〇県、〇〇市――と、その関連機関の発注に対して有効な資格です。市営の体育館の備品調達、県立病院の医療消耗品、市役所の事務用品。こうした案件の入札に参加するには、その自治体の参加資格を取っておく必要があります。一方、全省庁統一資格の対象は国の機関。中央省庁とその出先機関、自衛隊の駐屯地・基地、税関、法務局、ハローワーク、地方検察庁、入国管理局……数え上げるとキリがないほど多くの機関が含まれます。「市役所への納入」と「駐屯地への納入」は、まったく別ルートだと押さえてください。同じ市内にある建物でも、発注元が県なのか国なのかで、入口になる資格が変わるのです。

申請窓口と有効範囲の違い

申請窓口や有効範囲も大きく違います。地方自治体の資格は、自治体ごとに様式も窓口も別。例えば〇〇市と隣の△△市の両方に納入したければ、それぞれの市にもう一度申請する必要があります。書類の書式、必要な証明書、有効期間も自治体ごとにバラバラ。事業エリアを広げようとすると、その手間は意外と侮れません。これに対して全省庁統一資格は、一度の申請で全省庁・全国どこの出先機関にもアクセス可能です。申請窓口は調達ポータル(オンライン)か、地域ブロックごとの審査担当部署。書式は全国統一で、3年に一度の更新だけで済みます。営業の入口を一気に広げるという意味では、コストパフォーマンスがきわめて高い資格と言っていいでしょう。

【表1】地方自治体の入札参加資格 vs 全省庁統一資格(比較項目別)

 比較項目 地方自治体の入札参加資格 全省庁統一資格
 対象発注機関 県・市・区などの自治体および関連機関 中央省庁・出先機関・自衛隊・税関 等
申請窓口各自治体ごとに別々の窓口・書式全国統一・オンライン申請可
 有効範囲 申請した自治体の中だけ 全省庁・全国の出先機関を一括カバー
有効期間自治体ごとに異なる(2年が多い)原則 3年
 等級制度 自治体により異なる A・B・C・D の4等級で全国共通
新規参入のしやすさ営業エリアごとに登録の手間1度の申請で全国×全省庁を一気に開放

※ 地方自治体の有効期間や様式は自治体により異なる。代表的な例として記載。

身近な機関は、どっちの資格で入札できるのか?

比較表で違いがざっくり掴めたところで、もう一歩踏み込みます。「では、自分の身近な機関は、いったいどっちの資格で入札するんだ?」――この疑問にきちんと答えるのが、ここからの3つの表です。「警察」「消防」「病院」「学校」など、一見すると国の機関に見えても、実は地方公共団体の所属である機関は意外と多い。ここを取り違えると、せっかく資格を取っても狙った案件に参加できません。

【表2】全省庁統一資格で入札できる主な機関(国の機関)

 分類 主な機関(全省庁統一資格で入札可)
 安全保障 防衛省/自衛隊各駐屯地・基地・分屯地/防衛装備庁/自衛隊地方協力本部/防衛大学校/防衛医科大学校
警察・海上保安警察庁/海上保安庁/全国の海上保安部・海上保安署
 司法・法務 法務省/地方法務局/刑務所/少年院/少年鑑別所/検察庁/出入国在留管理庁/公安調査庁
税・財務財務省/全国の税関/国税庁/国税局/税務署/会計検査院
 国土・運輸・気象 国土交通省/地方整備局/地方運輸局/気象庁・気象台/観光庁
厚生・労働厚生労働省/労働局/労働基準監督署/公共職業安定所(ハローワーク)/検疫所
 文教・科学 文部科学省/文化庁/スポーツ庁
産業・経済経済産業省/特許庁/中小企業庁/資源エネルギー庁
 農林水産 農林水産省/林野庁/水産庁/地方農政局
外交・環境・他外務省/環境省/総務省/統計局/内閣府

【表3】地方公共団体の入札参加資格で入札できる主な機関

 分類 主な機関(地方公共団体の入札参加資格で入札可)
 行政(自治体本体) 都道府県庁/市町村役場/特別区役所/一部事務組合/広域連合
警察・治安警視庁(東京都)/道府県警察本部/警察署/交通安全協会
 消防・防災 市町村消防本部/消防署/消防団関連/都道府県の防災部局
医療都道府県立病院/市町村立病院/公立看護学校
 教育 公立小・中・高校/公立大学/都道府県・市町村の教育委員会
文化・社会教育公立図書館/公立博物館・美術館/公民館/体育館・スポーツ施設
 公営企業 水道局/下水道局/交通局(バス・地下鉄・路面電車)/公営ガス/病院事業局
福祉児童相談所/福祉事務所/地方の保健所(都道府県・政令市)
 外郭団体・公社 都道府県・市町村の外郭団体/土地開発公社/観光協会/公益財団法人(自治体出資)

【表4】★読者が勘違いしやすい代表例(最重要)

「国っぽいけど実は地方」「地方っぽいけど実は国」――この区別を間違えると、いくら資格を取っても狙った案件に参加できません。注意度★が多いほど、混同が多発する機関です。

 機関名 パッと見の印象 実際の所属 必要な資格 注意度
 都道府県警察(〇〇県警) 「警察=国」と思いがち 地方(都道府県の機関) 地方公共団体★★★
警察庁(霞が関)都道府県警と混同されやすい国(内閣府の外局) 全省庁統一資格★★★
 警視庁(東京都) 「庁」=国に見える 地方(東京都の警察) 地方公共団体★★★
市町村消防(〇〇市消防本部)「消防=国」と思いがち地方(市町村の機関) 地方公共団体★★★
 消防庁(総務省外局) 現場の消防と混同される 国(総務省の外局) 全省庁統一資格★★
県立病院・市立病院「公立だから国かも?」地方(自治体の事業) 地方公共団体★★
 防衛医科大学校病院 病院だから自治体? 国(防衛省) 全省庁統一資格★★
公立学校(小中高)教育=国?地方(教育委員会) 地方公共団体
 公立図書館 図書館=公的だから国? 地方(自治体) 地方公共団体
税務署・国税局自治体っぽく見える窓口国(財務省・国税庁) 全省庁統一資格★★
 都道府県税事務所 税務署と紛らわしい 地方(都道府県) 地方公共団体★★
ハローワーク(公共職業安定所)「公共」だから自治体?国(厚生労働省) 全省庁統一資格★★
 市役所・町役場  地方 地方公共団体
自衛隊駐屯地・基地国(防衛省) 全省庁統一資格
 自衛隊地方協力本部 「地方」と書いてあるが 国(防衛省) 全省庁統一資格★★
検察庁・地方検察庁「地方」がつく国(法務省) 全省庁統一資格★★
 地方法務局 「地方」がつく 国(法務省の出先) 全省庁統一資格★★
地方整備局・地方運輸局「地方」がつく国(国土交通省の出先) 全省庁統一資格★★
 教育委員会 「委員会」だから国? 地方(自治体所属) 地方公共団体

【色の凡例】

 全省庁統一資格 地方公共団体

全部覚える必要はありません。「迷ったら表3に立ち返る」くらいの感覚で十分です。重要なのは、「国っぽいから全省庁」「地方っぽいから地方」という雰囲気判断ではなく、必ず一次情報(公告書類)で参加資格要件を確認するクセをつける、ということです。

3.一度の登録で全国×全省庁――この資格の最大の魅力

ここまで読むと、全省庁統一資格の最大の特徴がはっきり見えてきます。それは「拡張性の広さ」です。一つの資格が、複数の販路の鍵になる――この感覚を掴むと、戦略の幅が一気に広がります。

全省庁で共通して使える

資格を一つ持っているだけで、防衛省、国交省、厚労省、経産省、農水省、文科省、外務省、警察庁――およそ国の機関なら、どこの調達にも参加できる権利が手に入ります。「うちは自衛隊への納入を考えて取得したけれど、結果的に税関や労働局からも声がかかった」「最初は防衛省案件だけだったが、いつの間にか国交省の地方整備局でも実績を作っていた」というケースも珍しくありません。一つの資格が、自社の意図を超えて複数の販路を開いてくれる。これが地方自治体の資格との一番の違いです。

全国どこの出先機関でも使える

さらに、対象は全国の出先機関に及びます。北海道の駐屯地、九州の海上保安部、東京の税関、地方の労働局、四国の地方整備局、東北の入国管理局……全国一括カバー。地方自治体の資格のように「使う場所ごとに登録し直す」必要はありません。地方の事業者にとっては、自社の所在する県だけでなく、隣県・遠隔地への営業も視野に入ります。輸送費が許す範囲なら、自社の射程はあなたが思っているよりもずっと広い、ということです。

4.4つの営業種目(物品の製造/物品の販売/役務/物品の買受)

申請時に必ず選ぶことになるのが「営業種目」です。ここを間違うと、せっかく資格を取っても狙った案件に参加できないことがあります。逆に、ここを上手に選ぶと、想定外の案件まで拾えるようになります。営業種目は資格取得後の3年間の戦い方を左右する、とても大事な選択です。

物販事業者が選ぶべき種目

全省庁統一資格には、大きく4つの営業種目があります。「物品の製造」「物品の販売」「役務の提供等」「物品の買受け」の4つです。地方の物販事業者がまず選ぶべきは、卸売・小売を中心とするなら「物品の販売」、自社で加工・組立まで行うなら「物品の製造」になります。清掃や警備、運送、ビルメンテナンスなどのサービス業務は「役務の提供等」、不要物品の引き取りや古物買取は「物品の買受け」です。自社の事業をどう見せるかで、選ぶ種目が変わってきます。例えば「家具を仕入れて納入」なら販売、「木材を仕入れてベッドを組み立てて納入」なら製造、というイメージです。

複数種目の併願は可能か

複数の種目を同時に申請することも可能です。例えば製造と販売の両方を扱う事業者は、両方の種目で資格を取得しておけば、参加できる入札の幅が一気に広がります。さらに、それぞれの種目内には細かい品目区分があります。「物品の販売」なら、衣服・その他繊維製品類、文具・事務機器類、家具・什器類、医療用機器類、電気・通信用機器類、輸送用機器類、燃料類、食料品・酒類、その他――といった大分類が並び、自社の取扱商品にあわせて複数選択する仕組みです。「最初に何を選ぶか」が、その後3年間の入札参加できる範囲を決めます。取扱商品の幅広い事業者ほど、品目区分は多めに選んでおくのが鉄則。少ない申請手数料の範囲で、参加できる土俵を最大限広げる発想です。

5.取得していないと参加できない案件のリアルな実例

抽象的な話だけだと実感が湧かないので、具体的な例を見てみましょう。「資格がない」とは現場ではどういう意味なのか、というイメージです。

駐屯地の調達公告例

例えば、ある駐屯地で「業務用冷蔵庫の調達」という公告が出るとします。ここに参加できるのは、全省庁統一資格を「物品の販売」で取得しており、かつ等級と地域要件を満たしている事業者だけ。地元市役所の入札参加資格をいくら持っていても、ここには参加できません。社用車で5分の距離にある駐屯地なのに、書類審査の段階で土俵にすら上がれない。そういうことが現実に起こるのです。私が行政書士として相談を受ける中でも、「ずっと近所の駐屯地から声がかからないのはなぜか」と思っていた事業者が、よくよく聞いてみると統一資格を取得していなかった、というケースが少なくありません。

資格未取得による機会損失

公告は、ほぼ毎日のように全国で出ています。年間で数千件、防衛省関連だけでも数百件単位。その全てに参加権を持っているか、まったく持っていないか。この差は、3年間で見れば取引機会の桁違いの差になります。しかも、防衛費増額の流れの中で、これからの数年は公告そのものの数も金額も右肩上がり。「あったらいいな」ではなく、本気で官公庁取引を考えるなら、まず必要な資格――それが全省庁統一資格です。早く取った人ほど、5年後の事業基盤が変わってきます。

まとめ/次回予告

ここまで読んで、地方自治体の入札参加資格と全省庁統一資格が「まったくの別物」であること、そして全省庁統一資格の拡張性の高さがイメージできたでしょうか。資格の正体さえ掴めれば、これから先のシリーズはぐっと頭に入りやすくなります。

次回(第3回)は、もう少し具体的に「自衛隊駐屯地・基地は一つの町である」という現場の話に踏み込みます。フェンスの向こう側で、毎日どんな物資が流れているのか――元自衛官の視点でお伝えします。商材の幅広さに、きっと驚かれるはずです。 「自社が4つの営業種目のどれを選べばいいか分からない」「自社の等級がどう判定されるか相談したい」という方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。元自衛官×行政書士の視点で、申請から運用まで丁寧に伴走します。

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