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「防衛費、また増えたらしいね」――
ニュースで聞き流してきたその数字が、実はあなたの商売と直結している、と言ったら驚かれるでしょうか。結論から言えば、増え続ける防衛費の中身は、戦闘機やミサイルだけではありません。駐屯地や基地で日々消費される食料、日用品、家電、工具、建材……その相当な部分は、実は地方の中小事業者から調達されているのです。この記事では、元自衛官で行政書士の私が、地方で物販を営む経営者の方に向けて「防衛費増額の本当の意味」と、それがあなたのビジネスにどう関係するのかをお伝えします。
1.ニュースで聞く「防衛費増額」――数字で見るとどう変わるのか
テレビで「防衛費がGDP比2%へ」と聞いても、地方で商売をしていると正直ピンと来ないかもしれません。ですが、数字で並べてみると、その規模感が一気に体感できます。
GDP比2%という数字のインパクト
日本は2022年12月、いわゆる「安保3文書」で防衛費の大幅増額を決めました。これまでGDP比1%程度で推移してきた防衛関係費を、2027年度にはGDP比2%水準へ引き上げる方針です。単純化すれば「予算をほぼ倍に増やす」という、戦後でも例のない大きな方針転換です。
年間予算の推移を並べてみる
具体的な金額で見ると、これまで5兆円台で推移していた年間防衛予算は、令和5年度(2023年度)に約6.8兆円、令和6年度(2024年度)には約7.9兆円へと拡大。2023年度から2027年度までの5年間では、累計約43兆円という、過去最大級の整備計画が組まれています。地方で年商数千万円から数億円の事業を回している経営者の方からすれば、まさに桁違いの予算が動いている、というのが正直な感覚ではないでしょうか。重要なのは、この増額が一年限りではなく、5年間という中期計画として確定している点です。つまり、今後数年にわたって右肩上がりの調達需要が見込まれている、ということです。
【図】日本の防衛関係費の推移(当初予算ベース)

2.増えた予算は何に使われる?――装備品だけじゃない調達の中身
では、その増えた予算は何に使われるのでしょうか。「どうせミサイルや戦闘機でしょ」と思われがちですが、実際の使途はもっと幅広いものです。
(1)防衛装備品に直結する予算
確かに、増額分の象徴的な使途は新型ミサイル、無人機、サイバー防衛など、いわゆる正面装備の強化です。ここは大手防衛産業の領域で、地方の物販事業者にとってはハードルが高い世界と言っていいでしょう。
(2)施設整備・維持管理に回る予算
一方で、見落とされがちなのが「施設整備」「老朽化更新」「自衛官の処遇改善」といった、生活インフラに近い予算枠です。老朽化した隊舎の建て替え、訓練場の整備、宿舎の更新――こうした工事には、必ず地元事業者からの建材・工具・消耗品の調達が伴います。工事そのものは中堅以上のゼネコンが受注しても、その下に幾重にも資材納入のレイヤーがある、というイメージです。
(3)隊員の生活・福利厚生に使われる予算
さらに地味ながら強力なのが、隊員の生活そのものを支える予算です。隊員食堂の食材、被服、日用品、寝具、宿舎の家電、清掃用品。これらは「人がそこで暮らす以上、毎日減って毎日補充される」性質の調達であり、いわゆるストック型ではなくフロー型の安定需要を生み出します。派手さはありませんが、地方の物販事業者がもっとも入り込みやすい領域はここに集中している、と私は見ています。
3.地方の物販事業者にどう関係するのか
「東京や大企業の話なんでしょ?」と思われた方にこそ、知っておいていただきたい事実があります。
全国に広がる駐屯地・基地という「調達現場」
自衛隊の施設は、全国に160ヶ所以上――陸上自衛隊の駐屯地・分屯地、海上自衛隊の地方総監部や基地、航空自衛隊の基地に分散して存在します。おそらく、皆さんの県にもほぼ確実に何らかの自衛隊施設があるはずです。そしてそれぞれが、独立した「調達拠点」として日々動いています。
中央調達だけでなく地方調達も膨らんでいる
自衛隊の物品調達は、防衛装備庁による全国一括の中央調達と、各部隊が直接行う地方調達の二本立てになっています。施設の補修資材、隊員食堂の食材、消耗品などの大半は地方調達。つまり、防衛予算が増えれば、地方単位での発注額も比例して増えていく構造になっているのです。これは「東京の話」ではなく、まさに「あなたの県の話」、もっと言えば「隣町の駐屯地の話」だと考えてください。
4.「うちには関係ない」と思い込んでいる人ほど見てほしい現実
とはいえ、ここまで読んでも「うちが扱っているような商品が自衛隊で売れるとは思えない」と感じる方は多いでしょう。でも、現実は少し違います。
実際の調達実績から見える裾野の広さ
公開されている過去の調達情報を眺めると、ベニヤ板、スノコ、養生シート、業務用冷蔵庫、カラーコーン、地元産の野菜、洗剤、寝具、事務用品――驚くほど身近な商材が、ほぼ毎日のように落札されています。「自衛隊=特殊な防衛装備品しか扱っていない」というイメージは、現場のリアルとはかけ離れたものなのです。
元自衛官だから知っている、現場の声
私が現役の自衛官だった頃、補給担当の同僚と「あの業者さんいつも助かるよね」「これは地元の○○屋に頼もうか」という会話を何度も交わしました。現場は、有名な大企業よりも、近くて顔の見える事業者を頼りにする傾向があります。納期、対応スピード、何かあったときの融通――こうした点で、地元の中小事業者にこそ強みがある領域なのです。逆に言えば、参加していない事業者が今もたくさんいるからこそ、新規参入の余地は十分に残されています。「自分には無関係」と決めつけて何もしない人と、「もしかしたら、うちの商材も拾われるかもしれない」と一歩踏み出す人。その差が、これから5年間の地方事業者の明暗を分けていく、と私は考えています。
まとめ/次回予告
ここまで読んで「自分の商売にも、もしかしたら関係あるかもしれない」と感じていただけたでしょうか。防衛費増額は、日本の安全保障の話であると同時に、地方経済にじわじわと効いてくる構造変化でもあります。そして、その流れに乗るための入口は、決して大手だけのものではありません。
次回(第2回)は、自衛隊への納入のカギとなる「全省庁統一資格」とは何か、地方自治体の入札参加資格と何が違うのかを、具体的な比較表とともに整理します。これを知らないと、せっかく目の前にある駐屯地にも、近所の税関にも納入できません。 「うちでも入札に参加できるのか、まず相談してみたい」という方は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。
元自衛官×行政書士のダブル視点で、現場感覚と申請実務の両面から伴走します。
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