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令和8年7月14日施行の改正では、飛行禁止エリアの拡大と並ぶもう一つの柱として「罰則の強化」が行われます。第3回では、新設される「直接罰」を中心に、違反した場合に何が起きるのかを解説します。

これまでの罰則の仕組み

現行法では、次の行為が「1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」の対象です。

  • 対象施設及びその指定敷地等の上空で小型無人機等の飛行を行うこと
  • 法第11条第1項に基づく警察官・海上保安官・自衛官の命令(機器の退去その他必要な措置をとるべき旨の命令)に違反すること

注目すべきは、施設の「周辺地域」(現行はおおむね300m)の上空での違反飛行は、それ自体が直ちに処罰されるのではなく、警察官等の命令に違反して初めて処罰される仕組みだったという点です。

改正で新設される「直接罰」(新第14条)

改正法は第14条を新設し、法第10条第1項の規定に違反して対象施設周辺地域の上空(対象施設及びその指定敷地等の上空を除く)で小型無人機等の飛行を行った者を、「6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金」に処することとしました。

つまり令和8年7月14日以降は、警察官等の命令があったかどうかにかかわらず、周辺地域の上空で無許可の飛行を行った時点で犯罪が成立します。「注意されたらやめればいい」は、もはや通用しません。

具体的にイメージしてみましょう。ある企業のオペレーターが、依頼を受けた空撮現場でドローンを離陸させたところ、その地点が近隣の駐屯地の周囲1000m圏内だった――このケースでは、誰かに注意される前であっても、必要な手続を経ていない飛行はその時点で第14条の処罰対象になり得ます。エリアが300mから1000mへと大幅に広がったことと直接罰の新設が同時に施行されるため、「気づかないうちに違反していた」という事態が起こりやすくなっている点に、十分な注意が必要です。

改正後の罰則の整理

 行為 罰則
 対象施設及びその指定敷地等の上空での飛行 1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
警察官・海上保安官・自衛官の命令(法第11条第1項)への違反1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
 対象施設周辺地域の上空(施設・指定敷地等の上空を除く)での飛行【今回新設】 6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

命令・実力行使の権限も拡充

罰則とあわせて、現場での対応権限も強化されます。警察官等は、違反飛行を行う者に対して機器の退去その他の必要な措置を命じることができ、一定の場合には小型無人機等の飛行の妨害や破損その他の必要な措置をとることもできます。

今回の改正では、この措置命令について「対象施設の管理者その他関係者に対し当該措置をとることを命ずることを含む」ことが明記されました(第11条の改正)。

また、自衛隊の施設が対象防衛関係施設に指定されている場合には、自衛官も同様に命令や措置の権限を持ちます。施設の敷地・区域の周囲の地域の上空については、警察官等がその場にいない場合に限り、自衛官が同様の措置をとることができます。さらに第9条の改正により、新設される対象特別要人所在施設(第5回で解説)もこれらの権限の対象に加えられています。

正しい手続を踏んだ飛行は処罰されない

ここまで読むと不安になるかもしれませんが、罰則強化は「無断で飛ばす行為」への対処です。対象施設の管理者の同意を得た者、土地の所有者・占有者(正当な権原を有する者)又はその同意を得た者、国・地方公共団体の業務としての飛行は、法律上認められた例外であり、必要な手続(同意の取得や事前の通報)を踏んで行う飛行が処罰されることはありません。

ただし、例外に該当する立場であっても、飛行の48時間前までの通報などの手続は法律・省令で定められた要件です。「自分の土地だから何もしなくていい」わけではない点は、くれぐれも注意してください。

もし現場で命令を受けたら/うっかり飛ばしてしまったら

飛行中に警察官・海上保安官・自衛官から機器の退去等の命令を受けた場合は、直ちに従ってください。命令違反は1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金の対象であり、直接罰(6月以下)よりも重い罰則です。

また、飛行後に「禁止エリアだったかもしれない」と気づいた場合は、まず飛行を確実に中止・着陸させた上で、事実関係を整理しましょう。違反の成否は個別の事情によりますが、放置は禁物です。不安があれば、行政書士などの専門家や関係機関に早めに相談することをおすすめします。

「知らなかった」では済まされない

新設される直接罰は罰金刑だけでなく拘禁刑を含む刑事罰です。有罪となれば前科となり、個人の生活はもちろん、企業であれば社会的信用の失墜、取引や許認可への影響など、事業に深刻なダメージが及びかねません。

刑事罰以外のリスクも見逃せません。前述のとおり、警察官等や自衛官には一定の場合に飛行の妨害・破損等の措置をとる権限が認められています。違反飛行と判断されれば、高価な業務用機体が現場で失われる可能性もあるのです。

特に業務でドローンを運用する企業は、7月14日以降、飛行経路の直下だけでなく「周囲1km圏に対象施設がないか」の確認をフライトプランの標準チェック項目に組み込むことを強くおすすめします。あわせて、現場のオペレーターへの周知教育、飛行前チェックリストの改訂、手続書類の保管ルールの整備など、社内体制のアップデートも施行前に済ませておきたいところです。

まとめと次回予告

  • 従来、周辺地域上空の違反飛行は「命令違反」で初めて処罰される仕組みだった
  • 令和8年7月14日以降は、周辺地域上空での無許可飛行そのものが直接処罰の対象(6月以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金)
  • 施設・指定敷地等の上空での飛行や命令違反は、従来どおり1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金

次回・第4回は、実務編として「自衛隊施設の周辺でドローンを飛ばすための手続」を、申請様式や期限まで具体的に解説します。

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出典・根拠資料

  • 重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第47号)本文
  • 防衛省関係重要施設の周辺地域の上空における小型無人機等の飛行の禁止に関する法律施行規則(令和元年防衛省令第3号)
  • 防衛省ホームページ「小型無人機等飛行禁止法関係」(令和8年7月3日更新)https://www.mod.go.jp/j/presiding/law/drone/index.html

本記事は上記の公表資料に基づく一般的な解説であり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際に飛行を計画される際は、必ず最新の告示・防衛省等の公式情報をご確認ください。