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制度の骨格が分かったところで、経営者として最初に確認すべきは「自社はそもそも申込みの対象になるのか」です。今回は、訓令第3条と防衛装備庁の公表資料に基づき、認証申請と契約申込みそれぞれの要件を整理します。
認証申請ができる事業者(訓令第3条第2項)
認証を申請できるのは、次のいずれかに該当する事業者です。
- 秘密の取扱いに関する特約条項を付した契約(三者間契約を含む)を防衛装備庁と締結し、自社の保全施設において現に秘密を取り扱っている事業者、又は当該契約の履行後3年以内の事業者
- 防衛装備庁との契約が過去5年以内に3件以上ある事業者(過去に秘密契約がなくても、今後秘密を取り扱う見込みがあり、申請時点で秘密保全施設を整備している場合も該当)
- その他装備政策部長が認めた事業者
つまり、秘密契約の実績がある会社だけでなく、一般の調達契約の実績を重ねてきた会社が、施設を整備して防衛事業の秘密分野へステップアップするルートも開かれています。
契約申込みができる事業者(訓令第3条第1項)
防衛事業適合事業者契約の申込みができるのは、次のいずれかです。
- 認証事業者
- 秘密又は保護すべき情報を取り扱う事業への参画の意思を有する事業者であって、別に定める条件に該当するもの
後者の「別に定める条件」について、公表資料では次の3類型が示されています。
| 類型 | 求められる体制 |
| 秘密保全施設を保有している事業者 | 秘密保全基準を満たす秘密保全体制(保全組織・規則・教育・施設)を現在も維持していること |
| 秘密保全施設や秘密取扱情報システムを有していない事業者 | 保全組織、秘密保全規則及び教育の体制に係る基準を満たしていること(専ら他社の施設を利用することが予定されている場合) |
| 保護すべき情報を取り扱う事業者 | 防衛省による直近の情報セキュリティ実地監査の結果が良好であること(指摘事項がある場合は是正・改善が必要) |
注目すべきは2つ目の類型です。自社で秘密保全施設を持たなくても、他社の施設を利用する前提であれば、組織・規則・教育の3つの体制を整えることで契約の対象になり得ます。設備投資が難しい中小企業にとって重要なルートです。
自社の立ち位置を確認するフローチャート
防衛装備庁の提出資料案内では、次の観点で自社の該当パターンを判定するフローチャートが示されています。
- 現在、防衛装備庁と秘密の特約を含む契約を履行中か
- 過去3年以内に防衛装備庁と秘密を取り扱う契約を履行したか
- 防衛装備庁と過去5年以内に3件以上契約を締結したか
- 自社で秘密保全施設を備えているか
秘密の契約実績と自社施設の両方があれば「適合事業者・認証のどちらも対象」、施設がなければ「適合事業者(契約)のみ対象」という整理です。自社がどのパターンに当たるかで、次回以降に解説する提出書類のセットが変わります。
経営判断のポイント
要件を眺めると、この制度は「実績のある事業者の移行」と「新規参入者の育成」の両方を意識した設計になっていることが分かります。現に秘密を取り扱っている事業者は移行期限(令和9年6月30日までの申込みで書類簡素化、令和10年3月末で旧制度廃止)から逆算した準備を、新規参入を目指す事業者はまず一般調達での契約実績づくりと保全体制の整備を、それぞれ進めるのが定石です。
また、認証申請の要件にある「特約を付した契約」には三者間契約も含まれます。元請の防衛関連企業を介した三者間の秘密保護契約の下で秘密を取り扱ってきた下請・協力企業も、認証申請のルートに乗れる可能性があるということです。サプライチェーンの中間に位置する企業こそ、自社の契約関係を一度棚卸ししてみる価値があります。
もう一つ実務的な論点が「どの単位で申し込むか」です。制度への移行は秘密を取り扱う組織単位で行うとされており、認証番号も事業者又は事業所ごとに割り振られます。全社一括か、防衛部門を持つ特定の事業所単位か。対象範囲の設計は、施設整備や教育対象者の範囲、ひいては準備コストに直結する経営判断です。秘密に触れる業務の実態がある部門・拠点を洗い出すことが出発点になります。
なお、いずれの要件にも当てはまらない場合でも、「その他装備政策部長が認めた事業者」という受け皿があります。防衛装備庁は相談窓口(よろず相談窓口)を設けていますから、判断に迷うケースは事前相談で確認するのが確実です。
「事業者」の範囲と要件の公示
訓令上の「事業者」は法人その他の団体と定義されており(第2条第3号)、株式会社に限らず広く対象になり得ます。また、契約申込み・認証申請ができる事業者の要件、申込みに必要な書類とその提出場所・方法、満たすべき情報保全体制、契約・認証の有効期間といった事項は、装備政策部長が必要の都度、防衛装備庁ホームページへの掲載により公示することとされています(訓令第4条、実施要領第4)。本連載で解説している要件・書類も、最終的にはこの公示と最新の様式で確認するのが正確です。「まず公示を確認し、分からない点は窓口に相談する」を基本動作にしてください。
次回は、審査で見られる「秘密保全体制」の中身──保全組織・規則・教育・施設・情報システムの5要素を解説します。
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【出典】防衛事業適合事業者制度等に関する訓令(令和7年防衛装備庁訓令第19号)、同訓令の実施要領(装装保第14846号)、防衛事業適合事業者制度(概要)、認証申請・防衛事業適合事業者契約の申込みに係る提出資料について(2026年3月・装備政策部装備保全管理課)ほか防衛装備庁公表資料。本記事は執筆時点の情報に基づく一般的な解説であり、個別の申請に当たっては最新の公示・様式をご確認ください。