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改正基本計画の変更点解説、2回目のテーマは基本的方針の筆頭に掲げられた「防災意識の醸成と社会全体での防災体制の構築」です。今回の改正で最も思想的な転換が表れた部分であり、企業の位置づけが根本から変わりました。

考え方の大転換――「自分ごと」化

今回の変更では、「行政が守る者、国民が守られる者」という考え方から、「国民、企業等、地域、行政が共に災害に立ち向かう」という考え方へ転換することが明記されました。防災意識の醸成、いわゆる「自分ごと」化と、社会全体での体制構築に取り組むことが基本方針の柱に据えられています。

背景には、被害の絶対量の大きさがあります。死者約1.8万人、避難者約480万人、帰宅困難者約840万人という規模を前に、行政の力だけで全員を守ることは物理的に不可能です。だからこそ、個人・家庭には住宅の耐震化、家具の固定、感震ブレーカーの設置、家庭備蓄が、企業にはBCPの策定と実効性の向上が、それぞれ「取り組むべきこと」として明示されました。

企業は「地域防災の担い手」と位置づけられた

経営者に特に読んでいただきたいのが、企業の役割に関する記述です。計画では、各企業等は社会に与える影響の大きさを勘案して事業継続のための備えを行うとともに、多くの企業従事者等が「帰宅困難者」という意識を持つのではなく、救助活動や被災者支援等、地域の防災の担い手として活動すること、他の帰宅困難者のために一時滞在施設を提供すること等、地域の一員としての地域社会への貢献が望まれる、とされています。

具体的に企業に促される取組としては、次のようなものが挙げられています。

  • 従業員の消防団や自主防災組織等への参加促進
  • 地方公共団体との地域貢献に関する協定の締結
  • 地区防災計画制度の活用による地域防災力向上への貢献
  • 同業他社との災害時相互支援の事前合意
  • 地方公共団体の防災部局・消防団・自主防災組織等との連絡・連携体制の強化

これらは一見、本業と関係のない「社会貢献」に見えるかもしれません。しかし、災害時に地域と助け合える関係を平時から築いている企業は、発災後の事業再開も早いというのが過去の災害の教訓です。また、行政との協定締結や地区防災計画への参画は、地域における企業の信用力を高める経営資産にもなります。

多様な連携と数値目標

社会全体での体制構築のため、具体目標も設定されています。例えば、避難所での温かい食事の提供のために事業者や事業者団体等と協定を締結した市町村の割合を100%にする目標(令和17年)が新設されました。キッチンカー事業者や食品関連事業者にとっては、自治体との災害時協定というかたちで地域防災に参画するビジネス上の接点が広がることを意味します。消防団についても、十分な救助用資機材を備えた消防団の割合を100%にする目標が掲げられ、地域ボランティア人材育成研修等の開催も進められます。

防災DXの加速化

もう一つの新しい柱が「防災DX」です。新総合防災情報システム(SOBO-WEB、令和6年4月運用開始)の利用率を省庁・地方公共団体・指定公共機関で100%にする目標や、物資調達を支える新物資システム(B-PLo、令和7年4月運用開始)の操作訓練参加率100%といった目標が並び、ドローンや衛星等の新技術の活用も促進されます。

防災分野のデジタル化は、防災関連の製品・サービスを扱う事業者には市場拡大の追い風です。同時に、一般の企業にとっても、行政の情報発信がデジタル基盤に集約されていく流れを踏まえ、災害情報の入手手段を今のうちに複線化しておく必要があります。

次回は、政治・行政・経済の「首都中枢機能の確保」と、企業の本社機能・代替拠点の話題を取り上げます。

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本記事は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(令和8年6月12日閣議決定)および同変更の説明資料に基づいて執筆しています。