事務所HPはこちら⇒「アラモード行政書士事務所」
今回から4回にわたり、改正基本計画の変更点を順に解説します。第3回は、計画の背骨にあたる「減災目標」と「具体目標」の変更です。一見すると行政内部の話に見えますが、国の予算と支援策がどこに向かうかを示す羅針盤であり、経営判断に直結する情報です。
新たな今後10年の減災目標
減災目標は次のように変更されました。
- 現行:死者数 約2.3万人からおおむね半減、全壊棟数 約61万棟からおおむね半減
- 変更後:死者数 約1.8万人から半減以上、全壊・焼失棟数 約40万棟から半減以上
新旧を比べると、母数となる想定値が下がったうえで、「おおむね半減」から「半減以上」へと表現が強まりました。さらに変更後は、これに加えて「災害関連死や経済的被害を最大限減らすことを目指す」ことが明記されています。直接死だけでなく、避難生活での犠牲や経済への打撃までを目標の射程に収めた点が、今回の大きな進化です。
具体目標が47個から189個へ――約4倍への拡充
減災目標を絵に描いた餅にしないため、施策ごとの進捗を測る「具体目標(指標)」が現行の47個から189個へと大幅に拡充されました。ポイントは3つです。
- 「首都直下地震緊急対策区域」を対象とした具体目標の充実
- 国土強靱化実施中期計画等を踏まえた具体目標の設定
- ワーキンググループ報告書等を踏まえた新たな目標の設定(家庭備蓄、感震ブレーカー設置率など)
経営者に関係の深い具体目標の例
189個の中には、企業・事業者に直接関わる数値目標が多数含まれています。代表的なものを挙げます。
- 大企業のBCP策定完了率:75.8%【令和7年】→ 100%【令和17年】
- 中堅企業のBCP策定完了率:54.8%【令和7年】→ 80%【令和17年】
- 事業継続力強化計画の認定件数:92,523件【令和7年】→ 190,000件【令和17年】
- 住宅の耐震化率:92%【令和5年】→ 耐震性が不十分なものをおおむね解消【令和17年】
- 感震ブレーカーの設置率:20%【令和6年】→ おおむね設置【令和17年】
- 災害に備えた食料品を3日分以上備蓄している家庭の割合:60%【令和7年】→ 100%【令和17年】
- 年1回以上防災訓練を実施しているマンションの割合:51%【令和5年】→ 100%【令和15年】
とりわけ「事業継続力強化計画の認定件数を約2倍にする」という目標は、中小企業・個人事業主への影響が大きいと考えます。国が認定件数の倍増を掲げた以上、認定取得を後押しする施策(普及啓発、優遇措置、補助金審査での評価など)が今後強化されると読むのが自然です。この点は第8回・第9回で詳しく掘り下げます。
「機能目標」の充実と毎年のフォローアップ
今回の変更では、首都中枢機能・ライフライン・インフラが発災直後においても最低限果たすべき目標である「機能目標」も充実されました。追加された目標の例として「首都中枢機関の重要設備を有する建物の非常用発電設備への燃料供給を絶やさない」が挙げられています。
さらに注目すべきは運用面です。国は、各分野の専門家の意見を聞きながら、減災目標達成に必要な施策の具体目標の進捗把握や課題の共有等のフォローアップを毎年実施するとされました。10年間置きっぱなしの計画ではなく、毎年進捗が点検され、遅れている分野にはテコ入れ(=予算・施策)が入る構造です。企業側から見れば、フォローアップで遅れが指摘された分野に翌年度の支援策が集中する可能性が高い、という読み方ができます。
次回は、今回の改正の思想的な転換点である「防災意識の醸成と社会全体での防災体制の構築」を解説します。
事務所HPはこちら⇒「アラモード行政書士事務所」
本記事は「首都直下地震緊急対策推進基本計画」(令和8年6月12日閣議決定)および同変更の説明資料に基づいて執筆しています。【 】内は目標の基準年・達成年を示します。