[前ページ] [次ページへ] 

事務所HPはこちら⇒「アラモード行政書士事務所」

「結局、大手しか勝てないんでしょ?」――全省庁統一資格の話をすると、必ずと言っていいほど返ってくる言葉です。これはよくある誤解。実は4段階の等級制度があり、中小事業者だからこそ参入しやすい入札の階層が、しっかり用意されています。今回は、A・B・C・Dの各等級の意味、自社がどの等級になるかの見積もり方、そして等級が低くても勝てる戦い方まで整理します。読み終わるころには、『うちにも勝てる土俵がある』と確信できるはずです。

1.A・B・C・D――4つの等級と参加できる金額帯

等級制度とは、入札に参加できる契約金額の上限・下限を、事業規模に応じて4段階に分けた仕組みです。『身の丈にあった入札に参加してくださいね』というルールづくり、と考えてください。大手と中小が同じ土俵で戦わないように、最初から土俵が分けられているのです。

『物品の販売、役務の提供』の場合の金額帯

『物品の販売』種目で見ると、おおむね次のように区分されます。A等級=予定価格3,000万円以上、B等級=1,500万円以上3,000万円未満、C等級=300万円以1,500万円未満、D等級=300万円未満。例えば100万円の案件はD等級向け、1,000万円の案件はC等級向けという具合です。自社の等級より上の案件には参加できませんが、下の案件には参加可能、というルールが基本です。

 付与点数 等級 物品の販売
 90点以上 A 3,000万円以上
80点以上90点未満B1,500万円以上 3,000万円未満
 55点以上80点未満 C 300万円以上 1,500万円未満
55点未満D300万円未満

『物品の製造』の場合の金額帯

『物品の製造』種目では金額レンジが少し広くなり、A等級=3,000万円以上、B等級=2,000万円以上3,000万円未満、C等級=400万円以上2,000万円未満、D等級=400万円未満です。製造案件のほうが単価が大きい傾向にある実態が反映されています。種目によって金額レンジが変わる点は、申請時に押さえておくべきポイントです。

 付与点数 等級 物品の製造
 90点以上 A 3,000万円以上
80点以上90点未満B2,000万円以上 3,000万円未満
 55点以上80点未満 C 400万円以上 2,000万円未満
55点未満D400万円未満

『物品の買受』の場合の金額帯

『物品の買受』種目では金額レンジが逆に少し狭くなり、A等級=1,000万円以上、B等級=200万円以上1,000万円未満、C等級=200万円未満、D等級についてはありません。買受案件のほうが単価が小さい傾向にある実態が反映されています。

 付与点数 等級 物品の製造
 70点以上 A 1,000万円以上
50点以上70点未満B200万円以上 1,000万円未満
 50点未満 C 200万円未満

※ 上記は代表的な営業種目の金額帯目安。年度や運用により微調整される場合あり。詳細は調達情報検索サイトを参照のこと。

2.等級は何で決まるのか

等級は『自分で選ぶ』ものではなく、決算書ほかの経営指標から自動的に判定されます。判定の元になる項目を整理しましょう。意外とシンプルです。

年間平均生産(販売)高――最大の配点

もっとも大きな配点となるのが、直近2年間の売上高の平均値、すなわち『年間平均生産(販売)高』です。要するに『年商どれくらいですか』というシンプルな指標。実績の大きい事業者ほど高得点になります。

自己資本額

次に評価されるのが、直近の決算における純資産、すなわち『自己資本額』です。大手は厚く、創業間もない事業者は薄い――その差がそのまま反映される項目です。ここを意図的に厚くするには時間がかかるので、長く堅実に経営してきた事業者ほど有利になります。

流動比率・営業年数などの加算項目

そのほか、『流動比率(短期的な支払能力の指標)』『営業年数』なども加算項目となります。流動比率が高いほど、長く営業しているほど、点数が積み上がります。これらの項目を合計した点数で、A〜Dの4等級に自動的に割り振られる仕組みです。言い換えれば、決算書を整えれば等級アップは現実的に狙える、ということでもあります。ここがこの制度のおもしろいところで、点数の積み上げ方を理解しておけば、3年後の更新時に等級を上げることも視野に入ってきます。

3.自社がどの等級になるかをざっくり見積もる方法

正式な等級は申請してみないと確定しませんが、決算書を眺めるだけで概算は可能です。代表的なケースで、自社の立ち位置をざっくり把握してみましょう。

決算書の売上高と自己資本をチェック

目安として、年商10億円超で自己資本数億円規模ならA等級候補。年商数億円規模ならB〜C等級。年商1億円前後ならC〜D等級。年商数千万円程度ならD等級――といった大雑把な見立てが可能です。あくまで目安ですが、自社決算書を片手に当てはめてみると『うちはこのあたりか』というイメージが掴めるはずです。

中小事業者の多くはC〜D等級に該当

日本の中小事業者の年商分布から考えると、地方の物販事業者の多くはC等級かD等級に位置することになります。これは『弱い』のではなく、『狙うべき案件層が違う』というだけの話です。むしろ、ここに勝機があります。後の章で詳しく見ますが、C・D等級向けの案件は件数も多く、大手が出てこない『中小同士の戦い』になることが多い。つまり、自社の規模感に合った勝負ができる土俵が、最初から用意されているのです。

4.中小事業者に最もチャンスがあるのは何等級か

『等級が低いと不利』と思われがちですが、現実はその逆です。件数ベースで見ると、むしろC・D等級向けの案件のほうが圧倒的に多いのです。

C・D等級の案件件数の多さ

予定価格がD等級向けの案件は、日々全国で多数発生しています。『大きな1件』よりも『小さな10件』を積み上げる戦略のほうが、中小事業者には現実的で、しかも勝率も高い。1件ずつの利益は小さくても、累積すれば事業の柱になります。

少額×高頻度の調達実態

業務用米○○俵、業務用洗剤○○ケース、ベニヤ板○○枚、養生シート○○セット――こうした身近な案件は、それぞれ数十万〜数百万円規模が大半です。これらがC・D等級向け案件として、毎月のように発生しているのです。大手が参加しない(参加できない)層に、安定した取引が転がっている、というのが実態です。特に地方の業務用卸・ホームセンター系・建材屋にとって、ここは『自社の通常業務の延長』として狙える層です。わざわざ新しい商品を開発する必要もなく、いつもの商材で勝負できる――これが、等級が低い事業者の最大の強みです。

5.等級が低くても勝負できる『随意契約』『少額契約』の存在

さらに、競争入札以外にも、地方事業者にチャンスをくれる契約形態があります。これを知っているかどうかで、戦略の幅が大きく変わります。

随意契約とは何か

随意契約とは、競争入札によらず、特定の事業者と直接契約する方式です。『他に取扱業者がない』『緊急性が高い』『少額である』などの条件で適用されます。実は、自衛隊の調達では、少額案件で随意契約が選ばれるケースが少なくありません。つまり、現場との関係さえあれば、競争入札を経ずに『じゃあお願いします』という流れが成立する余地が、いまでもしっかり残されているのです。

まとめ/次回予告

ここまでで、『等級=大手・中小の振り分け』ではなく、『狙うべき案件層の選別』だと理解いただけたでしょうか。中小事業者だからこそ勝てる土俵が、確実に用意されています。『うちは小さいから無理』ではなく、『小さいから勝てる層を狙う』という発想の切り替えが、最初の一歩です。

次回(第6回)からは、いよいよ取得方法の実務編に入ります。必要書類と社内の事前準備を解説します。『申請って面倒そう』というイメージを、できるだけ具体的に解きほぐしていきます。 『自社の等級がどう判定されるか知りたい』『決算書を見ながら簡易診断してほしい』という方は、当事務所までお気軽にどうぞ。元自衛官×行政書士の視点で、申請から運用まで丁寧に伴走します

[前ページ] [次ページへ] 

事務所HPはこちら⇒「アラモード行政書士事務所」