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「うちの扱ってる商品なんて売れるわけない」――そう思っている地方事業者にこそ読んでほしい、実際に納入されている商材リスト。防衛装備品の話ではなく、地味で、身近で、しかも需要が安定している『裾野』の世界です。この記事では、カテゴリー別に実例を挙げ、『自社の商品にも出番があるかも』と気づいていただく構成にしました。前回の第3回で『駐屯地は一つの町』というイメージを掴んでいただいたかと思います。今回はその町の中で、毎日何が買われているのかを、一気にお見せします。

1.食料・日用品カテゴリーの代表例

まずは、もっとも身近で、かつ地方事業者にとって入口になりやすいカテゴリーです。「人がそこで暮らす以上、毎日必ず消費される」品目の世界です。華やかさはありませんが、安定したリピート発注が見込めるという点で、地方の物販事業者にとっては最大の入口になります。

隊員食堂向け食材・業務用調味料

駐屯地内の隊員食堂では、毎日3食、規模に応じて数百〜数千食が提供されます。米、肉(豚・鶏・牛)、魚、野菜、卵、乳製品、パン、麺類、調味料各種、業務用の油や粉物……。地元の業務用食材問屋や農協・漁協系のグループであれば、まさに『いつもの商品』がそのまま納入対象になります。『県内産米○○トン』『業務用キャベツ○○ケース』『業務用カット野菜○○kg』といった調達公告は、年間を通じて常時出続けています。

日用品

隊員が有事の際に使用する日用品も扱われます。歯ブラシ、シャンプー、洗剤、タオル、靴下、肌着、湿布、絆創膏、菓子類、飲料、文房具……。ドラッグストア・コンビニで扱う商材がほぼそのまま調達されます。

2.工具・建材・職人系商材の需要

次に、駐屯地の整備・補修・訓練支援の現場で動いている商材です。地方のホームセンター・工具店・建材問屋がそのまま手を伸ばせる領域で、しかも消耗が早く、リピート性が高いのが特徴です。

手工具・電動工具

ドライバー、ペンチ、ハンマー、レンチ、スパナ、メジャー、レベル、ニッパー、電動ドリル、丸ノコ、サンダー、トルクレンチ、エアコンプレッサー……。整備工場や訓練支援部隊では、車両整備・装備品整備で日常的に消費されます。『現場で使い倒す前提』の業務用グレードが好まれます。ホームセンターの法人外商部や、地方の工具店・金物店が普通に対応できる商材ばかりです。

木材・合板・建材(ベニヤ板、スノコなど)

ベニヤ板、コンパネ、足場用パイプ、単管、垂木、桟木、スノコ、養生板、養生シート、ブルーシート、結束バンド……。訓練場の仮設物作成、保管庫の棚作り、廊下や倉庫の保護材として、毎月のように消費されます。地元の建材問屋・林産系業者にとって、ロットも安定していて取引しやすい商材です。『派手ではないけれど安定』という、地方事業者にとってはありがたいタイプの取引です。

養生資材・作業用資材

塗料、シーラント、目地材、グラインダー砥石、研磨布紙、ガムテープ、養生テープ、ウエス、軍手、安全帯、ヘルメット、安全靴、防塵マスク、保護メガネ……。『職人さんが普段使っている消耗品』がそのまま自衛隊調達の対象になります。建設業の周辺でビジネスをしている事業者にとっては、自社の在庫品目とほぼ重なる世界です。

3.家電・OA機器――意外と頻繁にある更新需要

家電と聞くと量販店のイメージが強いかもしれませんが、駐屯地では業務用・寮用の家電が定期的に更新されています。中小の業務用機器商社や地方の家電量販店の外商部門にも、十分に勝機がある領域です。

業務用家電(冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)

隊員食堂の業務用冷蔵庫・冷凍庫・製氷機、洗濯室の大型洗濯機・乾燥機、各部屋のエアコン、給湯器、電子レンジ、トースター、炊飯器、扇風機。これらは消耗品ではなく耐久財ですが、施設規模に応じて年間で相応の更新が発生します。地方の家電量販店・業務用機器商社の外商部門にとって、安定的な発注先候補になり得ます。

OA機器・事務機器

コピー機、複合機、シュレッダー、ホワイトボード、デスクトップPC、ノートPC、ネットワーク機器、プリンター、サーバー機器、UPS……。事務系部署の更新サイクルにあわせて、定期的に調達されます。リースか売り切りか、保守契約付きかどうかなど、契約形態は案件ごとに変わります。

寮・宿舎用の家電

官舎・隊舎の小型冷蔵庫、洗濯機、テレビ、電子レンジ、エアコン、布団乾燥機、扇風機、など。処遇改善に取り掛かっている現在、発注が頻出する分野です。

4.防衛装備品の付属品・消耗品

最後に、『ちょっと専門寄りだけど、中小事業者にも入る余地のある』ジャンルです。装備品本体は大手メーカーが受けますが、その『周辺』には小ロット対応できる事業者の出番が、意外なほどたくさんあります。

ケース・カバー・ストラップ類

無線機やGPSのケース、双眼鏡のカバー、銃器の保護カバー、武器庫用の防錆カバー、特殊サイズの収納袋、防水袋、肩ストラップ、迷彩柄のカバー類……。中小の縫製業者・革製品業者・成型業者にとって、特注スペックで対応できる柔軟性が強みになります。大手では採算が合わない『小ロット×特殊仕様』の世界です。

点検用・整備用の小物部品

特殊工具、点検用ゲージ、絶縁工具、計測器具のキャリブレーション用品、潤滑剤、絶縁テープ、配線材、コネクタ類、ボルト・ナット類……。専門商社経由が多い世界ですが、地方の精密加工業や金物業者が直接調達ルートに入ることもあります。技術力さえあれば、立地に関係なく勝負ができる領域です。

マニアな世界の現実

取扱説明書の製本印刷、迷彩柄のテントシートの縫製、軍用車両のシートカバー製作、特殊サイズの工具袋、迷彩柄の旗・幟……。『派手ではないが、必要不可欠』な商売が無数にあり、地元の特殊縫製業や印刷業者が一手に引き受けているケースも見られます。こういう領域は競合が少なく、一度入り込めれば長く続く取引になりやすいのも特徴です。

5.『うちでも勝負できる』が見えてくる商材棚卸しのコツ

ここまで4つのカテゴリーを見てきました。最後に、『自分の会社の商品に、出番がありそうかどうか』を判断するための、実務的なチェックポイントを共有します。

自社商品を4つ領域で整理する

まずは、自社の主要商品を『単価×ロット』で4領域にマッピングしてみてください。低単価×大ロットなら食料・日用品系、低単価×小ロットなら養生資材系、高単価×大ロットなら家電・OA系、高単価×小ロットなら特注品系。自社の強みがどの領域にあるかで、狙うべき公告のタイプが変わります。『うちは何でも扱える』と漠然と考えるよりも、領域を絞って深く攻めるほうが、実は勝率が上がります。

商材棚卸し 4象限マップ

第4回(商材リアル例)の H2-5『うちでも勝負できる』が見えてくる商材棚卸しのコツ の補足図として作成。自社の取扱商品を「単価 × ロット」で4象限にマッピングし、どの公告タイプを狙うべきか、自社の戦場がどこかを視覚化したものです。

図 商材棚卸し 4象限マップ(単価 × ロット)

【4象限の解説】

 象限 カテゴリー 代表商材 主な戦い方
 高単価 × 大ロット家電・OA・業務用機器系業務用冷蔵庫/洗濯機/エアコン/複合機/PC/寮・宿舎用家電家電量販店の外商部門・業務用商社
 高単価 × 小ロット特注品・装備品付属品系特殊縫製品(ケース・カバー)/特殊工具/装備品の周辺部品/少量精密加工品技術力で勝負/立地不問
 低単価 × 大ロット食料・日用品系業務用米・業務用食材/トイレットペーパー・洗剤/タオル・シーツ・寝具消耗品/売店日用品業務用卸・農協・地元食材問屋
 低単価 × 小ロット養生資材・職人系消耗品養生テープ・ガムテープ・ウエス/軍手・安全靴/結束バンド・ビス類/塗料・砥石ホームセンター・建材問屋

【この図の使い方】

1. 自社の主要商品(売上の8割を占める商品)を3〜5個ピックアップする
2. それぞれを『単価』と『ロット(1案件あたりの数量)』で4象限にマッピングする
3. 最も多く分布する象限が、自社の主戦場。そこに対応する公告タイプを優先的に追う
4. 他の象限にも『副業』として商材があれば、サブの公告チェック対象として登録する
5. 半年〜1年運用してみて、勝率の高い象限に絞り込んでいくのが王道
※ 単価/ロットの基準は業種により異なるため、自社感覚で『高い/低い』『多い/少ない』を決めてください。重要なのは絶対値ではなく、自社商品の中での相対位置です。

調達情報と照合する実務ステップ

次に、調達情報検索サイト(防衛省・自衛隊の調達公告ポータル)で、自社の取扱商品名や近似ワードを実際に検索してみることです。『ベニヤ板』『業務用冷蔵庫』『カラーコーン』『乾電池』『業務用米』など、思いついた品名をいくつか試してみると、『実際にいくらで・どれくらいの数量で・どこの機関が・いつ調達したか』という具体的なデータが見られます。これを5〜10件分眺めるだけでも、相場感が一気に掴めます。頭の中で考えるより、まず公告を見る――これが棚卸しの第一歩です。

まとめ/次回予告

ここまで読んで、『うちの商品にも出番があるかも』と少しでも感じていただけたら、それが商機の入り口です。『派手な防衛装備品』ではなく、『地味で、身近で、安定している』商材が、地方事業者にとっての本当の戦場です。

次回(第5回)は、参加できる入札の規模を決める『等級(A〜D)』の仕組みを解説します。『結局、大手しか勝てないんでしょ?』という誤解を解く回です。中小事業者にこそ勝機がある制度の話に踏み込みます。

『自社の取扱商品が自衛隊向けに合うかどうか、棚卸しを一緒にやってほしい』というご希望があれば、当事務所までお気軽にどうぞ。元自衛官の現場感覚と、行政書士の申請実務、両方の視点から伴走します。

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